★ 地方労災医員Aの意見書(審査請求決定書より)
(ア)症状に対する他覚的所見
X線 、CTで特に異常所見はみられない。
MRIではC3/4高位に脊髄内に以下のような所見がみられる。
T1強調像で等信号、T2強調像で高信号を呈し、造影MRIで淡く一様に造影される。
T1およびT2画像は脊髄損傷でもみられる所見であるが、外傷ではこのような造影所見を呈することはない。
これらのMRI所見は、腫瘍、炎症あるいは脱髄性疾患を示唆する。
神経学的には痙性四肢不全麻痺を呈し、 頚髄症が強く疑われる。
(イ)災害発生の状況と本件傷病との間に医学的相当因果関係が認められますでしょうか。
災害の状況から頭部あるいは頚部に外傷が加わったとは考えられない。
受傷2日後に下肢のしびれを自覚し、日毎に上下肢の麻痺が出現している。
外傷性脊髄損傷では特殊な例を除けば、その麻痺は徐々に改善することが一般的であるため、本件傷病は外傷由来の麻痺ではない。
画像において外傷を裏付ける所見はみられない。
★ 地方労災医員Aの意見書を検証する
(ア)造影MRIについて・・・この文献の赤線部分を文字起こし。
初診時の初回撮像時(ほとんどの例が受傷後1週以内)にはほとんど造影効果がみられず、受傷約2週後 にその効果がみられたが、受傷約1ヶ月後には消退する傾向にあった。これが根拠だそうです。
この文献に照らせ合わせると、受傷9日後に淡い造影効果がみられたことから、外傷ではこのような造影所見を呈することはない。となっている訳です。
<そこで疑問>
1)受傷後1週以内と仮定して、ほとんどとは、どの程度の確率なのか?
2)受傷約2週後とは、いったい何日後から造影効果がみられるのか? また、実際に受傷9日後の造影MRIの撮影を行っているのか?
3)例えば、造影MRIについて実際に検証を行った海外の文献の5頁目の右上「Key Point」に、ガドリニウム強化は外傷性脊髄障害の後およそ4日後に始まって、7~28日間で最大であった。とあります。
T1およびT2画像において脊髄損傷でもみられる所見であるにもかかわらず、自分たちに都合の良い文献を根拠に外傷を完全否定しています。
(イ)災害の状況から頭部あるいは頚部に外傷が加わったとは考えられない。
受傷2日後に下肢のしびれを自覚し、日毎に上下肢の麻痺が出現している。
外傷性脊髄損傷では特殊な例を除けば、その麻痺は徐々に改善することが一般的であるため、本件傷病は外傷由来の麻痺ではない。
画像において外傷を裏付ける所見はみられない。
1)そもそも、交通事故や高いところからの転落、脊柱(頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎)に大きな外力が加わり、骨折あるいは脱臼などを伴う外傷性脊髄損傷ではない。
そもそも外傷性脊髄損傷ではないのに、わざわざ外傷性脊髄損傷ではないと否定するのは外傷ではないとの印象操作?(鑑定医も同じ手法を用いています)
2)災害の状況が軽微で画像において外傷を裏付ける所見がみられなければ災害との関連性は無いのか?
右下資料(著名な医師の文献)下頁の左下に「単純X線上、骨傷の明かでない頸髄損傷」についての記述があります。
それは、脊柱管の狭窄因子となるような脱臼や骨折などの骨傷がないにも関わらず頸髄損傷をきたす損傷型です。
臨床的特徴として、①中高年に多く②過伸展外力が多く③転倒などの軽微な外力で生じ④多くは不全損傷とくに中心型損傷を呈します。
また、画像において外傷を裏付ける所見はみられずとも頸髄損傷をきたす可能性は56%と半数を超えるが、それにもかかわらず災害との因果関係を完全否定している。
この著名な医師の文献を完全に無視した意見書と言えます。
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